保険会社と示談交渉の3つの心構え

交通事故発生から損害賠償請求～示談までの流れ

人身事故を起こしてしまった加害者は、被害者やその遺族に対して、与えてしまった損害をお金で賠償しなければなりません。お金で後遺障害（後遺症含む）が消え去るわけでもないですし、もとの体に完全に戻すことはできません。ましてや、死亡事故の場合、金銭をもって賠償をきちんと行なっても被害者は生き返りません。どんな被害を受けたにしても、被害者側からすれば悔しくて悔しくて仕方がないことだとは思いますが、最終的には金銭的な解決しかできないのです。(もちろん、それがすべてではないと思います)

ある日、交通事故の被害者となり、どんな過程を経るかは知らなくても、いつの日か「賠償金」の支払いを受け、「示談」することになるというのは、簡単にはイメージができていると思います。入り口は「交通事故」であり、出口は「示談」あるいは「円満解決」ということになります。保険会社との示談交渉の前に、事故発生からの過程がどのような流れなのかを解説していきます。

負傷から示談までの流れ

治療(入通院)
症状固定
損害賠償請求(示談交渉)
示談・円満解決

１. まず治療に専念

交通事故に遭った被害者は、病院などで治療や検査を受け、その治療費は一般的に加害者、あるいは加害者が契約している保険会社に随時、支払ってもらいます。

２. 症状固定まで通院

交通事故で受傷したケガが完治、あるいは治療を続けてもこれ以上は良くならない状態の「症状固定」となるまでは通院・治療をします。

３. 示談交渉開始・損害賠償請求

被害者は加害者・保険会社に交通事故で支払った費用、減少した収入、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料（後遺障害が認定された場合）、苦痛の代償としての慰謝料、後遺症で労働能力が低下したために将来的に失う逸失利益（後遺障害が認定された場合）等を請求します。

４. 示談・損害賠償額の決定～支払い

お互いの話し合いで、それまでに加害者側が支払った治療費等を差し引いた、加害者が被害者に支払う損害賠償額が決定し、被害者がそれを受け入れると、損害賠償問題は解決となります。

保険会社と示談交渉する前に

保険会社の担当者の中には、デリカシーに欠けた担当者がいます。被害者をなめてかかり、無知につけこんで半ば騙すような形で示談を進める者もいます。そのような担当者がいることを頭に入れておくだけで、万が一、そのような担当者にあたった場合、知らないよりは冷静に対処できるでしょう。もちろん、ちゃんとした保険会社の担当者もいることを念のため申し添えたうえで、そうした保険会社のプロを相手にするときの心構えをしましょう。

①保険会社を恐れない

保険会社の担当者が出てくるということは、加害者が任意保険に加入しているということです。加入していなければ自賠責の支払いのみで、それ以上なら加害者との直接交渉になるため、加害者に支払う能力がない場合、支払ってもらえない可能性もあります。そう考えると、任意保険に入っていれば、正しい過程で、正当な賠償金を請求すれば満額に近い賠償金を支払ってもらえる可能性が高く、保険会社は恐れる存在ではありません。

②冷静は最大の武器

何事にも冷静さは大切ですが、特に示談交渉についてはそう思います。そもそも、交通事故被害者が怒っているとき、ほとんど不安からくるもので、示談交渉のプロである保険会社の担当者に自分がいいようにされてしまわないか常に恐れています。

しかし、それは知らないから不安で、わからないから怖いのです。示談交渉がどんなものか、相手がどんな風に攻めてくるのかを知れば、「きっと次は◯◯と言ってくる」などと、わりと冷静でいることができ、保険会社の担当者に罵詈雑言を浴びせることもないでしょう。相手はプロです。これまでに様々な交通事故被害者を相手にしてきていますので、こちらが怒鳴ったところで、怒り損となり、事故のストレスは増えるだけなのです。

冷静でいることで、相手の狙いや、想定している妥協点を予測できます。また、仮に相手が「反則行為」をしてきたとしても、きちんと反論できます。突然、交通事故に遭ったツライお気持ちはお察ししますが、1日でも早い円満解決を目指して、常に冷静でいられるよう心がけましょう。

③保険会社の言いなりにならない

これは、妥当な賠償額を勝ちとるためには当然のことです。特に1回目に保険会社の提示してくる金額というのは、大抵「妥当な賠償額」よりもかなり低いと言わざるを得ません。また、相手を見て賠償額を増減することもあります。だからといって、ゴネれば良いというものでもありません。ゴネて賠償金額がアップするのであれば、そんなに簡単なことはありませんし、そんなことをしていては保険会社の経営は成り立ちません。

大切なことは

「交渉は多くを語った方が不利になる」

「切り札の存在は最後まで明かさない」

特に、2つ目の「切り札の存在は最後まで明かさない」ですが、これはたとえばデリカシーに欠けている担当者が「反則技」を使ってきたときに最大の効果を発揮します。そして、「切り札」のもっとも上手な使い方は、「切り札を持っている」ということを最後の最後まで内緒にしておくことなのです。