後遺症と後遺障害の違いを理解する
「後遺症と後遺障害の違い」について解説します。
被害者の方々には、しっかりと理解していただきたい内容です。
交通事故の被害者になったら、後遺症を抱えてしまうという事は、よくある話です。保険や損害賠償の世界では、後遺症という言葉のほかに、後遺障害という言葉が使われています。この言葉の違いは、何でしょうか。
後遺症とは、事故で追ってしまった怪我が完治せずに症状が残ってしまうことです。
そして、後遺障害となるには、5つの要件を満たすことが必要です。
①怪我が将来も完治しないものであること
②怪我と交通事故の間に因果関係があること(怪我が交通事故のせいだといえること)
③怪我のために労働能力の低下があること
④後遺症が医学的に証明されていること
⑤その症状が自賠責保険の等級認定に該当するものであること
※4については、14級に限り、「医学的証明」ではなく「医学的説明」で認定される。
簡単にいえば、後遺症のうち、「自賠責保険の等級認定に該当する」ものが後遺障害であるといえます(例えば、失明は自賠責保険の等級で1級に該当しますので、失明は後遺障害です)。また、後遺障害であると認定されて初めて後遺障害慰謝料が支払われます。なので、被害者は、後遺症が後遺障害であることを証明するために診断を受けることが重要になります。
また、後遺障害という言葉は、傷害と対比して使われることが時折あります。交通事故に遭って怪我をしたとします。その傷害の治療のために入院や通院をします。
しかし、治療を続けても、症状が治らずこれ以上改善の見込みがない状態になることがあります。この状態を症状固定といいます。被害者に支払われる損害賠償のうちで、事故で怪我をしてから症状固定までを「傷害部分」、症状固定以降を「後遺障害部分」と呼んで区別したりします。
傷害部分に含まれるものは、治療費、入院費、病院までの交通費、休業補償、入通院慰謝料(入院、通院の精神的苦痛に対して支払われる金銭)などがあります。一方、「後遺障害部分」は、逸失利益(後遺障害がなければ得られたであろう利益)、後遺障害慰謝料(後遺障害を負った精神的苦痛に対して支払われる金銭)、(介護が必要となった場合の)介護料などです。
ここで注意する点は、症状固定以降は、後遺症が残っていたとしても入院費や通院費は支払われなくなるということです。加害者側は、損害賠償の額をできるだけ低く抑えたいと考えます。ですから、加害者側の保険会社などが、「症状固定の診断書を送ってほしい」などと催促してくることがあります。
しかし、症状固定を判断するのは、あくまで医師と被害者本人です。信頼できる医師とじっくり治療のできる環境を見つけるということは、適切な額の損害賠償を受け取るという意味でも、被害者にとって大事なことなのです。
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